》ロオル ※くっついてる。らぶらぶ。 たくさんの曲を歌い、何日も練習したダンスを踊っても、インタビューの中でするのは、音楽やダンスの話より、断然レンアイの話だ。 最近はもう、慣れてしまって、答えもワンパターン化してしまっている。 好みのタイプ、優しくて料理上手な子。聞かれたら年上が好きかな、と付け加える。 そこでくるだろう、作って欲しい料理、オムライスとハンバーグ。聞かれたら、二人で料理もしてみたいけど僕は不器用だから、邪魔になるかも。ここで苦笑いをする。 初デート、映画館。恋愛物は恥ずかしいから違うのがいいなあ。照れ笑い。 して欲しいこと、傍にいてくれたらそれでいいよ。男友達より女友達が多い子の方がいいな。完璧。 「じゃあ、最初は碇くんからお願いね」 「はーい!よろしくお願いします!」 雑誌記者さんの前、そして控えているメンバーの前、椅子に座り、最初に一枚。作りなれた笑顔を作った。 極端に言えば、夢を売るお仕事のもっと細かい役割分担、アイドルはきっと、架空恋愛を売るお仕事なんじゃないかと思う。 それなのに、たまにくるこの質問。 兄弟なら、ペットにするなら、誰だとか、メンバーを当てはめていくもの、 「じゃあ、付き合うなら誰がいいかな?」 これ、だ。 訊いてる側は冗談だってわかっているけど、これをメンバーの前でって、公開処刑に近い。 「えー、やっぱり彼方くんかなあ。カッコイイし、いっぱい楽しませてくれそうだから。場所ですか?うーん、僕、遊園地行きたいなっ」 特にほら、視線が突き刺さるし。 なるべくそちらを見ないように、気付かないふりをしながらいくつかの質問に答えて、何枚か撮影をして、彼方くんと入れ替わった。 みんながいる場所、彼方くんが座っていたところに座り、水を一口飲むと、机の下から軽く足を蹴られる。 その方向を見ると、視線はインタビューを受ける彼方くんを向いている流智くんで、なあに?と訊いても、別に。としか言わない。 わかり易すぎて、口元がゆるみ掛けた時、彼方くんにもさっきの質問が回ってきて、僕も視線をそっちに移した。 今日の彼方くんは、ボケるでもなく、ちゃんと質問に答えていた。それでも田中さんは相変わらず、ハラハラと見ている。 ワンパターン化して来ているのは、僕だけじゃないのだ。突拍子のないことをしかねない、クールなイメージで売ってる彼方君は、特に。 「オレも碇くんがいいかなぁ。いつも二人でじゃれてるんで一番しっくりくるかなって。デートはもちろん遊園地に連れて行きます!あはは」 相思相愛だねえ。なんて、笑って茶化したスタッフさんに、彼方くんも僕も、ラブラブなんです。と冗談で笑い返した、和やかな空気の中、次は土門くんとスムーズに進んでいき、最後の流智くんの番になった。 荒々しく立ち上がったのとは裏腹に、にこやかに回答していく姿はいつもと変わらない、営業スマイル。 例の質問、流智くんは考える素振りをしながら少しだけ僕を見やり、視線を戻した。 「僕は、碇、ですかねえ。」 当て付けに別のところに行くのかと思えば、意外。 前に質問された時と同じく、自分。って言うと思ってた。 「ちょっとわがままだけど、」 どっちが。 ていうか、ちょっと待って。 悔しかったんだとしたら、バカだなあ。と思うけど、けど、 「なんだかんだ長いから、一緒にいると一番落ち着くので」 そんなこと言うなんて、思わなかった。 今まで、バレたらヤバイからと言って不自然なくらいひた隠しにしていたのは、僕よりもあの人の方だったんだから。 不覚にも動揺しそうになった僕を見ることもなく、言ってやったぞとでも言わんばかりの満足気な顔。腹が立った。 戻ってきたら、いつもと違うこと言わないでよ気持ち悪い。そう言ってやろうと決めた。 僕はちっとも落ち着きません。だから少しは、僕の台本通りに動いてよね。 100409. |