》羨ましいわけじゃない。




※流智×女の子、碇×女の子描写あり
※むなくそ悪くなる碇






流智くんに、彼女が出来たらしい。

メンバーに自分の色恋沙汰なんて、普通あんまり言い触らしたりしなものなんじゃないの?そう思いながら、返事を返す。
雑誌を捲り、ふうん。と言うのは不満だったみたいで、少し不機嫌になったけど、話を聞いてくれるのは僕しか居ないから、流智くんまた勝手に話し始めた。
その流智くんの嬉しそうな顔と言ったら、僕は雑誌を真っ二つに破きそうになった。
どおりで、(こき遣われるだけの)メールも電話も、減る訳だ。なんておめでたい。

健気で、可愛いらしい彼女。
一度会ってみたいなあ。そう言ったら、流智くんは全力で拒否してきた。
そんなにいいんだ。その言葉に流智くんは、また顔をデレっとだらしなく弛ませる。

だから、奪ってみた。

家に遊びに行ったら丁度その彼女がいて、自分のタイミングの良さに感動した。
帰れと言う流智くんをあしらい、流智くん曰く可愛いらしい彼女と、流智くんを足蹴にお話をする。
のけ者にされて拗ねる流智くんは、それでもずっと、彼女の髪の毛をいじっていた。
流智くんの彼女は、ほんとうに可愛かった。
すごく簡単に、僕に寝返ってくれるほど。

ほんとはバレないようにするつもりだったけど、彼女が話してしまったようで、僕は1ヶ月、口をきいて貰えなかった。
一方的に感情を露にし、一度だけ声を荒げた流智くんは、信じらんねぇ。と言って、感情の入らない薄笑いを浮かべた。ごめんね。と言いながら、僕は思う。
流智くんは、女の子を見る目がない。だからこんな、あそこと頭のネジが弛い上に不細工な女なんかに、引っ掛かるんだ。
馬鹿野郎なのは、どっちなの?知ってた?彼女ほんとは、彼方くんに近付きたくて、流智くんに近付いたんだって。
でも今は、僕の方がいいんだって。
可愛いよね、流智くんが言ってた通りだね。
つまんない。
どうせなら泣くなり、殴るなりして欲しかった。


流智くんに彼女が真実を告げて半月、僕は流智くんの元彼女に別れを告げた。
本当は、半月も付き合いたくなかったけど。
それでも、僕の口からは、彼女への本音だけがこぼれる。
「やっぱり流智くんに申し訳ないから。短い間だけど、ありがとう」
嘘はなかった。

流智くんと繋いだであろう手と、手を繋いで。
流智くんとキスをしたであろう唇に、口付けて。
流智くんも入れたのかなと思うと、彼女の身体はすごく気持ちがよかったし、
流智くんが中に出したかも知れないと考えると、どうしようもなく興奮した。
彼女という媒体の中で、僕と流智くんは一緒になれた気がした。だから、ありがとう。
でも、流智くんとの肉体関係がなくなったであろう彼女との行為は、僕にはもうなんの意味もない。だから、さようなら。

彼女と別れたんだ。そんな報告をしたら、流智くんは、あっそ。とそれだけを返してきた。
でも、それから明らかに変わった態度。ほとんど前どおり話すようになったけど、やっぱりどこか気にしていたんだろう。ぎこちなかった僕らの関係は、不思議なことに前よりも良くなった気さえする。

今度は、バカな女の子に引っ掛からないでね。


100614.