》及川、穴を掘る

※及川♂×国見♀・下品な下ネタです




「俺がバレーをしてる国見ちゃんの胸が揺れるたびにドキドキしてるって事は、他にもドキドキしてるヤツがいるかもしれないよね」

 俺、松川、岩泉、及川の四人が部室で着替える中、突然及川が喋りだした。
 国見ちゃんというのは、女子バレー部の一年レギュラーで、及川が現在付き合ってる女の子だ。
 紹介された時、眠そうな顔でにこりともしなかったから、地味で無愛想な印象を受けたが、笑ったらかわいいかもなという顔をしていた。女子にしては高い身長がコンプレックスなのか、猫背なのもまた少し暗い印象を受ける。だが及川的にはそこも可愛いらしい。だから背中なぞったらびくんびくんでもするのかと訊いたら、翌日まで口をきいてくれなくなったのを覚えている。

 友人の彼女という事もあり、あまり意識していなかったから、記憶を辿った。眠たげな幼い顔に発育のいい身体、という危うさは、イケナイ感じがして結構エロイかも。
 そんな彼女がバレーをするという事はつまり、バレーはジャンプするスポーツであるから、必然的にそのたわわな胸が揺れてしまうという事になる。

「それさ、頷いたらどうなんの?埋められんの?」
「?なんで埋めんのさ」
「お前の独占欲が強いからだろ」
「待って待って!さすがに埋めたりはしないよ!?同意されたらちょっと気をつけた方がいいかなって思っただけだから!」
「及川がナニを気をつけんだよ。ガンつけて回るとか?」
「気をつけんのは国見だよな〜」
「……まぁ、でも、アレはマズイよな」

 及川に埋められないようふざけた空気を作った俺らを余所に、岩泉が声を低め至極真面目なトーンで言った。

「ま、マズイ……?」

 及川の声が震える。岩泉はいつものようにシャツを羽織るが、やがてボタンを留める指を止めた。俺と松川は張りつめた空気に顔を見合わせた。
 もごもごと口ごもった岩泉は、歯切れ悪く言う。

「……や……あれは、ぶっちゃけ……揺れすぎだろ」
「岩ちゃん!!!!」

 及川の声は殆ど悲鳴だった。

「見てたんだ!やっぱり見てたんだ!?」
「やっぱりってなんだよ!!」
「だって岩ちゃん、巨乳好きじゃん!!おっぱいバレーしたいでしょ!レシーブしたいでしょ!あぁどうしよう!?四人中二人も喜んでるなんて……部の半分は喜んでいる可能性がある!!」
「だっ!誰も喜んでるなんて言ってねーだろクソ川!!」

 まるで紅玉とかいうりんごのように顔を真っ赤にした岩泉の鉄拳が、錯乱した及川に決まった。倒れた及川は床に座りこみ、殴られた頬に手を添えながら、グスンと鼻を鳴らす。岩泉のグーパンをまともに食らってそれで済む頑丈な体をしておきながら、このメンタル。
 これは、俺は楽しんでたけどね。目の保養になるよ。なんて言わない方がいいだろう。おっぱいバレーについて詳しく聞きたいが、今は地雷になりかねない。

 つーか及川お前してるだろ、おっぱいバレー。膝枕しながら「Cクイック〜ぽよん!」とかやってそう。うわっセッターずるい。スゲー楽しそう。んでバックアタックってか。岩泉じゃないがこれは壁でも殴りたい。

「そんなに心配なら、バレーさせなきゃいいじゃん」
「バレーしにココに来たような子に、そんな事言えるはずないじゃんか……俺が及川さんモテちゃうからバレーしないでって言われるようなもんだよ?アッ、ちょっと嬉しい」

 嬉しいのかよ。

「オイ、本人には言ったのか?」

 岩泉が口にした疑問に、及川は押し黙った。
 身支度を済ませた俺らは、仕方なしに各々部室にあった椅子を中央へ集め、腰をおろす。及川はのろのろと膝を抱え、体育座りになった。椅子に座れよ、俺ら責めてる訳じゃないんだから。

「……ううん、まだ」
「は?言えよ」
「えーー、だってなんて言うの?プレー中の国見ちゃん胸揺らしすぎって言うの?俺がいつも見てるみたいじゃん!」
「見てんじゃん」
「見てるけどね!?」
「そんなに心配なら、恥じらってる場合じゃないよな」

 松川の言う通りである。俺と岩泉は頷くが、及川はうーんと唸った。
 なぜそこまで忠告する事を拒むのだろう。俺なら多分、おっぱい揺れまくるから眼福だったわ。とひやかして羞恥心を煽ったり、自主的に気をつけるようそれとなく促す。相手は高一の女の子なんだから、性の対象にされる事を拒みそうなものだし。想像だけど。

「国見ちゃんには無邪気にバレーして欲しいっていうか……男の目気にして思いっきりプレー出来なくなったらイヤっていうか……」
「あぁ……」
「……むずかしいな」
「うーん」

 案外まともな理由を話されて、今度は俺らが黙ってしまった。
 テレビでやるような大きな試合を見ながら、それこそ揺れる胸や、パンティラインが浮いてるなんて邪に喜んだりしてしまうが、身内となると話は別だ。意識して本来のプレーが出来ないのではやりきれない。

「女バレってなんで巨乳多いんだろうな」

 松川が溜め息と共に呟いた言葉に、俺らは確かにと頷く。
 長年バレーをしている選手の中には、胸の形も良く、キュッとくびれた腰回りと、対照的に少しむちっとした太ももを持つ、エロ漫画から出てきたような体型は多い。

「あれじゃね?脇締めるから」
「……確かにココんとこ使うな」

 構えるポーズを取った岩泉が、自らの大胸筋に触れた。そこに俺と松川が手を伸ばし、及川も触れる。
 冷静になるとなかなかしょうもない光景だが、俺らは至って真剣に岩泉のたくましい胸を押していた。

「成長ホルモン出る時間にちゃんと寝てるとこっちも大きくなるってホントかな。練習で疲れてると早く寝ちゃうじゃん?」
「……国見いつも眠そうだもんな」
「だから。いっぱい寝てそう」
「いっぱい寝てんの?」
「イッパイ……寝てるね。俺と居る時は結構ガマンしてるけど。夜すっごい早くにおやすみなさいって言ってくる」
「ノロケられた気がすんだけど」

 そう言われた及川はでれでれと顔を緩ませた。お前悩んでたんじゃないのか。
 胸の成長にも睡眠が関係してるなら、せっせと育てているのは明らかに国見だ。睡眠時間を減らせと言うのは酷だし、今更止めたところで遅い。
 それによくよく考えれてみれば、なにも国見だけが揺らしているワケではないのだ。触らずして視覚的に楽しめるなんて素晴らしい。ユニフォームのショートパンツも際どいし、まったく女バレは最高である。

 とはいえ、自分の彼女が他人にそう思われているとなると、結局はふりだしに戻る。なんなら、あのショートパンツ姿だって見せたくない。

 しかしため息を吐きかけた時、俺は閃いた。

「あ!」
「なに!?」
「騎乗位だよ!」

 高らかに叫んだ俺に、三人の困惑した顔が向けられた。いきなりなに言ってんだコイツというような間抜け面どもに、ふふんと鼻で笑ってみせる。

「まず国見に騎乗位させるでしょ」
「チョット!なに言ってんの!?」

 及川は急に慌てて俺の膝に飛びついてきた。

「国見ちゃんは俺の彼女!」
「知ってるよ。及川以外誰が国見に騎乗位させるんだっての」
「ちょっ、もぉ!人の彼女に騎乗位させるとか言わないでよ!」
「してるくせに〜」
「マッキー!!」

 取り乱した及川というのは面白いのだなと思った。ニヤニヤ笑うと、及川は悔しそうな顔で歯を食いしばる。その反応じゃ、してるって言ってるようなもんなのに。面白い。これだから及川は嫌いになれない。
 今まで散々女の子をとっかえひっかえしてたにも関わらず(まぁ毎回及川がフラレて終わるのだが)、彼女の下ネタ言いたくないタイプだったのか。そういえば、聞いた事ないような気もする。
 俺は隣に座る岩泉の胸筋に、再び手を伸ばした。手ブラの要領で片方ずつ支えると、岩泉は眉間に皺を寄せた。構わず続行するが許せ、お前の親友の為だ。

「だからさー、騎乗位で頑張ってる国見に、こうな?支えてやって、おっぱい揺れて痛くなーいー?って言ってやんのよ。この状況なら言えるデショ」
「知らないよ!」
「その前にさ、すっごい揺れるよねーとか言うのはどう?」
「知らない知らない!」
「あんまり揺らすとココんとこの靭帯切れそうだよな」
「「「……確かに」」」

 岩泉の思いがけない一言に、俺らは静かに同意した。
 思いがけないが、ひどく真っ当な意見だ。女体の話題を前にした男子高校生から出たにしては、なかなかストイックな話ではあるが。

「そこまで考えた事なかった……」
「騎乗位ってやりすぎるとやばいもん?」
「それ言ったらいきなし揺れるAVなんかも結構やばくね」
「でも俺、起こしてする時は対面でぎゅってしてるからそんなに揺れないよ。擦れてはいるけど」

 及川の発言に、部室の空気が一瞬シンと静まりかえった。

「……やってんだ」
「あっ?!!」
「乳首擦れんの俺もスキ」
「ちが!違うってば!今のナシ!ナーシー!」

 及川は途端に顔を赤くして、必死に手を振り否定し始めた。だがもう遅い。
 岩泉は及川以上に顔を赤らめて居たが、俺と松川は及川が掘った思わぬ墓穴にすっかり面白くなり、腹を抱えて笑った。

 及川はあの大人しい顔がベッドで乱れるのがいいのだろうか。だとしたら、及川もなかなかオヤジくさ……成熟した趣味をお持ちのようで。
 つーか、国見って変態に好かれそうな雰囲気だから、もっとドエロイ事させてるのかと思ってたけど、案外ラブいのしてるんだな。俺びっくり。

「ちょっと想像しちゃった」
「だからイヤだったのにっ!!」

 涙目の及川は一層ヒステリックに声を上げた。

「今度国見ちゃんでそういうコト想像したら、お前ら埋めるからなァ!!」
「やっぱ埋めんじゃん」


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